スタマイ大量在庫ショップ
スタマイの新しい成熟
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(えーっと、このプリンとエクレアと――)誠さんに渡されたメモ。私はそれを見ながらコンビニのスイーツをどんどん籠の中へと入れていく。(まさかこんなお使いを頼まれるとは……) ――十数分前。「ここに書いてあるものを全て買ってきてくれ」「え……?」(これって全部コンビニで売ってるスイーツだよね)渡されたリストの中には最近出たばかりの新商品の名前もたくさん載っている。(出不精の誠さんがなんでこんなに詳しいんだろう……)そんな疑問と同時に、何故これほど大量のスイーツが必要なのかと気になってしまう。「……新作のための調査、とかですか?」「それに答える義務はない。とにかく頼んだぞ」「あっ、ちょっと誠さん……!」私が止めるのも聞かず、彼は奥の部屋へと行ってしまう。(よく分からないけれど買いに行くしかまいか……) (結構、時間かかっちゃったな)誠さんからもらったスイーツのリスト。そこに載っているもの全て集めるには、コンビニを何店舗も回る必要があった。(チョコとか溶けてないといいんだけど……) 「これ、頼まれていたものです」机の上にビニール袋を全部置くと彼は小さく頷く。「ご苦労だったな」そう言ってから誠さんはテーブルの上にスイーツを並べて食べ始める。まずは一番近くにあったショートケーキから。「ふむ……」さっと食べ終えたかと思うと、どこか納得したかのように小さく声を漏らす。その次はプリン。しかし。「…………」(あれ?一口で食べるの止めちゃった……)その後もそんなことを繰り返し――机の上には一口食べてやめたもの。その反対に全て食べられたものなど、様々な容器が乗っていた。(まあ、こんなに沢山あるんだしさすがに全部は食べきれないよね)私がそんなことを考えていたのを見抜いたのか、誠さんはゆっくりと口を開く。「食べきれないから残したわけではない」「……なんで私の考えてることが分かったんですか?」「君は感情が顔に出やすいからな。推測するのは簡単だ」遠回しに、しかしある意味はっきりと単純と言われた気がした。複雑な気分になっている私に構うことなく、誠さんは話を続ける。「俺が残したのは気に入らなかったものだけだ」「美味しくなかったってことですか?」「単に味だけの問題ではない。パッケージのデザインや食べやすさも評価に含まれている」「ひょ、評価……?」「例えばこのコンビニ……」「ケーキ系には定評があるが未だにプリンは弱いままだ。食感が硬いのか柔らかいのかどっちつかずになっているせいだろうな」「反面、ケーキ系は俺の感覚ではクリームが今ひとつだが。この妙に硬い質感がいいとファンを掴んでいるのは事実――」誠さんはそこから淡々と目の前にあるスイーツを解説して行ってくれる。(な、なんでこんなに詳しいの……!?)あまりにも突然のことに唖然としていたのだが、ふと疑問がわき出てくる。「あの、誠さん。そこまで詳しいならどれが自分の口に合うかも分かりますよね?」「けど、なんであえて気に入らなさそうなスイーツもリストに加えたんですか?」私の質問に誠さんの目が一瞬光った気がした。「君にしてはいい質問だな。まず、コンビニ製菓部門というのは日々急速な発展を遂いて――」(な、なんだか話が長くなりそうな予感……)誠さんの意外な一面に驚きながらも、私は彼の話へと耳を傾けるのだった。