はじめてスタマイを使う人が知っておきたい6つのルール
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これは服部さんに、とてつもなく振り回された休日の話。(流石、人気のカフェ……完全に出遅れた!)服部さんと一緒に訪れたのは、ハンモックカフェ。話題に上がったこともあって、今日のデート場所はこの店に決まったのだが、いかんせん相手は服部さんだ。早め早めといってもどうしても遅くなってしまう。「ちょっと人が並んでますね」(まあお店は逃げないし、待つ分には問題ないんだけどね)「ほーん、なるほどねぇ」「あと2,3組くらいでお店に入れるみたいです……」「……って、服部さん?」記入表に名前を書いて振り向くと、服部さんは店の壁にもたれかかっていた。「人間が昼になったらすることは何だと思う?…そう、昼寝だね」「もう午後もかなり過ぎてますよ!?」「『果報は寝て待て』だよ」「確かに格言としては正しいですけど時間帯がっ!」「…………」「もう寝てるし……」立ったまま寝てしまった服部さんの傍らには、1人分だけ空いた椅子が置いてある。(もしかして、この席を私に譲ってくれたのかな?)そのことを聞きたくても、服部さんはすっかり眠りこけてしまっていた。(マイペースなのか、気を遣ってるのか……)寝息を立てている服部さんに苦笑を送って、私は譲ってもらった席に座って順番を待った。 それから数十分後、ようやく名前が呼ばれた。私は服部さんを起こして案内する店員さんの後ろについていく。店員「お待たせいたしました。こちらのお席へどうぞ」(……って、この席!)宛がわれた席は大きなハンモックがひとつだけ下がっていた。いわゆる、カップルシートというものだ。「こ、ここに座るんですか……」思わず呟いてしまったが、他に選択肢はない。「うーん」服部さんはまだどこか寝ぼけながらも先にハンモックの端に座った。その隣に座るようにゆっくりと手招きをされる。「し、失礼します」楽しそうに笑う服部さんはカップルシートなんて気にしている様子もなく、私も負けじと横に座ろうとするのだけど……(これ、以外と座るのが難しい……!)「……ほーん」普段通りの緩い声。だが、次の瞬間、ハンモックは小刻みに前後に揺れた。「ほれ!」「わっ!?わ、わっ、まっ!」ゆらゆらと揺らされて、バランスを崩される。服部さんの顔を見ると、面白いものを見つけたように、にやにやと笑っている。(遊ばれてる……!)「もっ、服部さん、いい加減にっ……!?」起き上がろうとしたところで、思いもよらずに大きくハンモックが揺れた。体勢は崩れ、服部さんに向かって倒れ込む。「わ、ごめんなさい……!」慌てて体を起こそうとすると、やんわりと服部さんが邪魔をしてくる。「よしよし」「よしよしって……服部さん、ちょっと、起こさせてくださいよ!」「分かった分かった、何もしないから。ホントに可愛いなあ」「だからっ……」(て、店員さんに見られたら!)じたばたと小さく抗ってみるも、服部さんはまったく意に介さず私の頭を撫ではじめた。「おー、いいこいいこ」「服部さん!」「マトリちゃんの隣で何もしていないこの無駄な時間が、俺に生きる価値を与えているんだよね」「なにもしてなくないじゃないですか!」「ま、何事も深く考えなさんな」(……もう)嬉しそうに頭を撫でてくるこの人を止められる気がしない。私は溜息をついて大人しく力を抜いた。「……人が来たら止めてくださいね」「それと、何を注文するか決めてください」「マトリちゃんを堪能したらね」とそう頷いた服部さんのより優しい手つきが私の頭を慈しむ。(話が噛み合っているんだか、いないんだか……)(でも、マイペースな服部さんに、私も癒されてるのは確かなんだよね)ついつい眠ってしまいそうな、心地よいハンモックに2人で揺られる。店員さんがこちらへ注文を取りに来るまで、私たちはカップル席を満喫していた。